Column 補償コラム

【第2回】やさしい民法 『誰が不動産を所有できるのか』

最終更新日:2026.03.13

 前回は、不動産の所有について法はどのように定めているかをとりあげました。第2回では、その不動産を誰が所有できるのかについて、取り上げたいと思います。

 

 「所有できる」とは、すなわち、所有権という権利を持つことができるということです。権利を持つことができるのは、「人」だけと定められています。民法第3条第1項には、「私権の享有は、出生に始まる」との規定が置かれています。そして、この第3条第1項は、民法第2章の「人」に置かれていることから、この「出生に始まる」とは「人」のことを指していると理解できます。つまり、犬や猫などの動物は人ではないため、これらの動物は、不動産を所有することができません。ペットをわが子のようにかわいがったとしても、ペットに不動産を贈与することはできません。このように所有することができる、すなわち、権利を持つことができる資格を「権利能力」と呼んでいます。「人」だけに、権利能力が認められています。実は、「人」には、この第2章に定める「人」と第3章に定める「法人」の2種類があります。第2章に定める「人」のことを「自然人」と呼びますが、これは生身の人間のことを指しており、法人と区別するためにこの用語が使われています。

第3条第1項に定める「人」=「自然人」は、生まれた時から、権利を有することができます。この条文を反対解釈(反対解釈とは、ある場合についてだけ規定しているとき、

それ以外の場合には、その規定は適用されないと解釈する方法のことを言います)すると、生まれる以前と、死亡した時以降は権利を持つことができなくなります。ただし例外的に、生まれる前の胎児の時から相続権など一定の場合には権利能力が認められています(民法第886条第1項など)。胎児の時に不動産を相続することができるのです。この場合、実務上、胎児の名義での登記が認められています。逆に、所有していた人が死亡すると、死亡した時点で権利能力が失われますから、権利を持つことができなくなります。死亡した時については民法に規定はありませんので、医学的な判断に従うことになります。日本では心臓死が原則とされていますが、例外的に臓器を移植のために提供する場合には、脳死の時点となります(臓器移植法第6条第2項)。他にも生死不明により失踪宣告(民法第30条)を受けた場合にも、死亡したものとみなされます。

 第3章に定める法人も「人」ですので、権利能力が認められており、不動産を所有することができます。A株式会社やB一般社団法人は、不動産を所有することができます。XがA株式会社の株式を100%所有している一人会社であったとしても、XとA株式会社は別々の人であり、A株式会社の所有する不動産は、X所有の物とはなりません。これに対して、「権利能力なき社団」と呼ばれる法人格を持たない自治会や同窓会のような「社団」の場合はどうでしょうか。権利能力はない、つまり人ではないのですが、限りなく法人に近い実態をもっている「社団」の場合には、社団の構成員全員に総有という概念を使って、できるだけ法人の場合と同様に扱おうという考え方が判例で認められています。しかし、不動産の登記については、代表者の個人名義での登記のみが認められています。

 第2回では、不動産を所有できるのは誰かについて、所有できるのは「人」のみであり、その「人」とは誰かについて述べてきました。次回は、人(自然人)が判断能力を失うとどのような問題が起こるのかについてみていきたいと思います。

 

執筆者

【第2回】やさしい民法 『誰が不動産を所有できるのか』

小西 飛鳥(こにし あすか)

平成国際大学

法学部 教授