Column 補償コラム

【第4回】やさしい民法 『所有者の死亡により、相続が開始するとどうなるか』

最終更新日:2026.04.28

 前回は人(自然人)が判断力を失うと契約を結んでもその契約は無効となること、その結果、必要な契約も結べなくなるという問題があることを説明しました。そして、この問題を解決するために成年後見という制度があることを見てきました。ちなみに、この成年後見制度は202643日、より当事者のニーズに合った制度に改正することが閣議決定されました。第4回では、所有者の死亡により、相続が開始するとどうなるかについて見ていきたいと思います。

 所有者が死亡すると、その人は権利能力を失います。そうすると、その人が所有していた物は一体どうなってしまうのかという問題が生じます。この問題を解決するために相続という制度が用意されています。

 人が死亡すると、相続が開始します(民法第882条)。甲不動産を所有するAが死亡しましたが、Aには配偶者B、子C及びDがいたとします。この場合、配偶者B、子C及びDは法定相続人となります(民法第887条第1項、第890条)。相続人BC及びDは、Aの財産を包括承継します(民法第896条)。これは、個々の財産を個別に引き継ぐのではなく、権利・義務をまとめて一体として承継することを意味します。つまり、プラスの財産である甲不動産もマイナスの財産である借金(例えば、1000万円の金銭債務)もすべて引き継ぐことになります。もし、マイナスの財産のほうが多いとわかった場合は、各相続人は相続を放棄することができます。放棄をするとその人は、初めから相続人ではなかったものとみなされます(民法第939条)。マイナスの財産のほうが多いのかどうかは、調べてみないとわかりません。そのため、被相続人の財産状況を調査し(民法第915条第2項)、相続を放棄するかどうかを判断するための期間(熟慮期間)が定められています(民法第915条第1項)。仮に配偶者Bが相続放棄をすると、相続人はC及びD2人ということになります。

 C及びDは相続することを選択したとします(民法第920条 単純承認)。C及びDは、Aが遺した財産(遺産)を共有します(民法第898条第1項)。Aが遺言していない限り、法定相続分の割合で持分を有します。この共有関係を解消するために、C及びDは遺産分割をする必要があります。遺産分割は、遺産に属する物や当事者の置かれた状況などの諸事情を考慮して、柔軟に行うことができます。具体的には、当事者間の話し合いによる方法(民法第907条第1項 協議分割)、家庭裁判所の調停による方法(家事事件手続法第244条、別表第2、第12項 調停分割)、調停が不成立の場合の審判(民法第907条第2項 審判分割)などがあります。

 遺産分割によりCが甲不動産を取得することになった場合、Cは相続開始時にさかのぼって甲不動産の所有権を取得していたことになります(民法第909条本文)。202441日に相続登記が義務化されましたから、Cは、自身が所有者となった旨の相続登記をしなければなりません。

 このように、遺産分割協議がスムーズにまとまった場合には、法定相続分による共同相続の登記を経ることなく、直接C単独名義の相続登記をすることができます。もっとも、協議がまとまらない場合には、共同相続の登記又は相続人申告登記をしておく必要があります。

 第4回では、所有者が死亡すると、その財産はどのように承継されるのかについて見てきました。次回は、所有者の生死が不明となった場合に、どのようにその土地を管理していくのかについて扱いたいと思います。

 

執筆者

【第4回】やさしい民法 『所有者の死亡により、相続が開始するとどうなるか』

小西 飛鳥(こにし あすか)

平成国際大学

法学部教授