Column 補償コラム

【第5回】やさしい民法 『所有者の生死が不明となった場合に、どのようにその土地を管理していくのか』

最終更新日:2026.05.26

 前回は所有者が死亡すると、その財産はどのように承継されるのかについて見てきました。具体的には所有者の死亡により、相続が開始し、被相続人の財産を相続人が承継する手続きについて説明しました。第5回では、所有者の生死が不明となった場合に、どのようにその土地を管理していくのかについて見ていきたいと思います。

 甲土地を所有するAは、外国へ移住し生死が不明となっています。Aは独身で両親は他界し親族は甥Bのみがいます。甲土地の上には建物乙があり倒壊の恐れがあります。この場合、現時点ではBには何も責任はありませんが、Aが死亡した際にはBが相続人になる可能性が高いです(民法第889条第12号)。そこで将来相続人となる可能性があることから、Bは利害関係人として家庭裁判所に失踪宣告を求めることができます(民法第30条第1項)。家庭裁判所がAについて失踪宣告をするとAは死亡したとみなされ(民法第31条)、相続が開始します。これにより、Bは自身の財産として甲及び乙を適切に管理することが可能となります。

また別の例も考えてみましょう。丙土地を所有するCは隣地である戊土地の水はけが悪く、丙土地に土砂が流れてくるのではないかと心配になりました。戊土地の所有者は、登記簿上はDと記載されていますが、Dと連絡を取ることができません。このような場合にCが取れる方法は大きく2つあります。1つ目は、Dと連絡が取れず、その所在が不明であることを理由に不在者の財産を管理する管理人を選任する方法です。Cは利害関係人として、その財産の管理について必要な処分を命ずるように家庭裁判所に求めることができます(民法第25条第1項)。「必要な処分」の重要なものは、財産管理人の選任です(家事事件手続法第146条第1項 選任管財人)。選任管財人は、原則として、財産の保存及び利用・改良行為という管理行為を行うことができます(民法第103条)。

2つ目は、所有者不明土地管理制度の利用です。Cは利害関係人として、戊土地を対象として、所有者不明土地管理人による管理を命ずるよう裁判所(地方裁判所)に求めることができます(民法第264条の21項)。所有者不明土地管理人も原則として、保存行為及び戊土地の性質を変えない範囲内において利用・改良行為という管理行為を行うことができます(民法第264条の32項)。また管理人の権限は、戊土地上にあるDが所有しているとみられる動産にも及びます(民法第264条の22項)。問題となる不動産が建物の場合には、所有者不明建物管理制度も用意されています(民法第264条の8)。

この2つの方法のどちらを選択すべきかですが、1つ目の不在者財産管理制度は、不在者であるDのすべての財産を代理人として管理することになります。Cは、戊土地さえ管理してもらえれば良いわけですから、過剰な手続きとなる可能性があります。これに対して、所有者不明土地管理制度は、戊土地とその上にある動産のみ管理してもらえばよいわけですから、場合によっては、管理の費用や手間を抑えつつ、適切な管理をしてもらうことが期待できます。また、特定の土地のみを対象とする点で、実務上利用しやすい制度であるといえます。以上のように、状況に応じて適切な制度を選択することが重要となります。

 第5回では、所有者の生死が不明となった場合に、その者が所有している土地をどのように適切に管理していくのかについて3つの方法(失踪宣告、不在者財産管理制度、所有者不明土地管理制度)を取り上げました。次回は、所有者以外の者が、土地を利用する制度を扱いたいと思います。

執筆者

【第5回】やさしい民法 『所有者の生死が不明となった場合に、どのようにその土地を管理していくのか』

小西 飛鳥(こにし あすか)

平成国際大学

法学部 教授