Column 補償コラム

【第6回】やさしい民法『所有者以外の者が、土地を利用する制度にはどのようなものがあるか。』

最終更新日:2026.07.27

 前回は、所有者の生死が不明となった場合に、その者が所有している土地をどのように適切に管理していくのかについて見てきました。その者が死亡したものとみなす失踪宣告や、その者の生存を前提として第三者が管理する不在者財産管理制度、所有者不明土地管理制度について説明しました。第6回では、所有者以外の者が土地を利用する制度として、使用貸借と賃貸借を取り上げます。

 所有者が、自己が所有している土地を別の者に利用させたいと考えた場合に、考えられる方法は大きく4つあります。すなわち、使用貸借契約や賃貸借契約を結んで借主・賃借人に利用させる方法と、地上権設定契約や永小作権設定契約を結んで地上権者・永小作権者に利用させる方法です。今回はこのうち前者を扱います。使用貸借契約も賃貸借契約も債権契約であることに目を向けてみましょう。債権契約は契約の相手方に対してのみ、契約で合意された内容を主張できる契約です。このような債権としての共通点を踏まえた上で、次にこの2つの契約の違いを見ていきましょう。

使用貸借契約は無償で借りる契約(民法第593条)、賃貸借契約は賃借人が賃料を支払うこと、つまり有償で借りる契約(民法第601条)という違いがあります。無償で借りる契約である使用貸借契約は、無償であることからそもそも当事者間に何らかの関係性があることが多いでしょう。例えば、友人同士や親族間で土地を貸し借りする場合がこれにあたります。

 使用貸借契約は、無償であることから、貸主に貸さなければならないという契約の拘束力を弱める規定が設けられています。すなわち、契約を書面にしていないのであれば、土地を借主に引き渡すまでは契約の解除ができるとされています。また契約の終了時期についても、その期間及び目的を定めなかった場合は、貸主はいつでも契約を解除できます(民法第597条第2項)。また、借主と貸主の個人的な関係性から結ばれる契約であることから、借主の死亡により契約は終了します(民法第597条第3項)。

 これに対して賃貸借は、有償の契約であり、賃貸人にはその土地を賃借人に引渡し、さらに適切な状態で使用させることも義務付けられます。もし、土地に不具合があり賃借人が利用できないのであれば、賃貸人は修繕をする義務を負います(民法606条第1項)。

 賃貸借契約のうち土地に建物を建てることを目的にした契約については民法だけでなく借地借家法も適用されます。建物を建てることを目的に土地を借りた賃借人はより保護の必要性が高いため、賃借人を保護するために借地借家法が制定されています。

 Aが所有する土地をBが月10万円で借りて店舗を建てる場合を例に考えてみましょう。民法では、存続期間には上限があり50年とされています。(民法第604条第1項)。これは、あまりにも存続期間が長いと所有者の権利がないがしろにされてしまうからとされています。AB間で存続期間を60年とする賃貸借契約は認められません。これに対して借地借家法では下限が30年と定められ、上限はありませんので(借地借家法第3条)、60年の存続期間は有効です。これは賃借人が安心して借りた土地に建物を建てて生活や事業を営むことができるようにするためとされています。

 契約の終了にも違いがあります。民法では、定められた契約期間が満了した場合に、契約を更新するか否かは当事者間の合意により決まります。Aが更新に応じなければ契約は終了します。これに対して、借地借家法では、Aが契約の更新をしたくないと思っても、建物がある場合は、正当事由がなければ更新を拒絶することはできません(借地借家法第5条第1項、第6条)。この制度も、賃借人の保護を重視していると言えます。

 次に、ABに貸している土地をCに売却した場合についても見てみましょう。この場合、民法では賃借権の登記がなければ、BCに賃借権があることを理由にその土地を使い続けることを主張できません(民法第605条)。賃借権は債権であることから、Aはその登記をする義務はないとされています。借地借家法では、第三者に対抗できるようにするために、賃借人が同土地上に建物を建て、その建物の登記をすれば、賃借権を第三者に対抗できるという制度を用意しました(借地借家法第10条第1項)。Bが店舗を建てその登記をしていれば、Cに対しても賃借権を対抗することができるのです。

 以上のように、建物を建てることを目的に土地を有償で借りた賃借人は、手厚く保護されています。逆に見ると、賃貸人は一旦、土地を貸してしまうとなかなか返してもらえないということになります。この問題を解消するために定期借地権という制度が別に設けられていますが今回は立ち入りません。

 第6回では、賃貸借契約及び使用貸借契約という2つの債権契約を取り上げました。次回は、他人の土地を利用する物権について見ていきたいと思います。

執筆者

【第6回】やさしい民法『所有者以外の者が、土地を利用する制度にはどのようなものがあるか。』

小西 飛鳥(こにし あすか)

平成国際大学

法学部 教授