Column 補償コラム

【第7回】やさしい民法『他人の土地を利用する物権にはどのようなものがあるか。』

最終更新日:2026.07.27

 前回は、他人の土地を利用する使用貸借契約及び賃貸借契約の違いについて見てきました。とりわけ、建物を建てることを目的に土地を有償で借りた賃借人は、手厚く保護されていることが明らかになりました。第7回では、他人の土地を利用する物権について取り上げます。

民法は、他人の土地を利用する物権として、地上権・永小作権・地役権・入会権を定めています。これらのうち、地上権と永小作権は土地を排他的に利用する権利であるのに対し、地役権は他人の土地を一定の目的で利用する権利であり、入会権は地域住民が共同で利用する慣習上の物権です。

 永小作権は他人の土地を耕作・牧畜をする物権ですが(民法第270条)、現在はほとんど利用されていません。地役権は自分の土地をより便利にするために他人の土地を利用する物権です(民法281条)。例えば、通行するため、土地の眺望を確保するためといった目的で使われますが、地役権を設定しても承役地の所有者は引き続き自身の土地を利用することができることに特徴があります。入会権はある地域の住民集団が山林などを共同で利用する慣習上の物権です(民法第263条・第294条)。この回では他人の土地を排他的に利用できる地上権をメインに取り上げたいと思います。

地上権は、工作物または竹木を所有するために他人の土地を利用する物権です(民法第265条)。地上権は物権であるため、第三者に対抗するためには登記が必要です(民法第177条)。地上権者は、土地所有者の承諾を得なくても、地上権を第三者へ譲渡したり、抵当権を設定したりすることができます。土地所有者が他人に土地を利用させようと考えた場合には、賃貸借契約を選択するのが一般的です。土地所有者の立場からすると、賃借権と地上権を比べると、登記、存続期間、権利の譲渡などの場面で地上権のほうが土地所有者にとって負担が重いため、地上権の設定を避けてきました。その後、借地借家法が制定され、建物の所有を目的とする地上権や土地賃貸借は、借地借家法ではいずれも「借地権」とされ(借地借家法21号)、共通のルールが適用されることになりました。

地上権のうち、区分地上権は比較的利用度が高いとされています。区分地上権は、地下または上空の一定範囲を定めて地上権の目的とする権利です(民法第269条の2)。例えば地下鉄、地下道、高架鉄道などを敷設する場合に、土地所有者は自身の土地の利用を可能にしながら一定の範囲のみ他人に土地の利用を委ねることができます。とはいえ土地所有者が設定を望まない場合には、道路・鉄道の敷設計画は難航することから、大深度地下法(大深度地下の公共的使用に関する特別措置法)が制定され、大都市圏のインフラ整備に利用されています。

地上権は地上権設定契約によって成立することが一般的ですが、抵当権の実行によって、法律の規定により地上権が成立することもあります(法定地上権)。土地と建物が同一人に属している状態で土地または建物に抵当権が設定され、その後の競売によって土地と建物の所有者が別々になった場合には、一定の要件の下で建物のために法定地上権が成立します(民法388条)。競売により土地の所有者と建物の所有者が別々になった場合に、他人の土地を利用する権利を認めないと、建物を取り壊さなければならないことになるという不都合を避けるために法律で定めた制度です。法定地上権は、当事者の合意ではなく、法律の規定によって当然に成立する地上権です。

前回取り上げた賃借権との比較をしてみましょう。地上権と賃借権は、いずれも他人の土地を利用する権利ですが、地上権は物権であり、賃借権は債権であるという違いがあります。そのため、地上権者は土地所有者の承諾なく権利を譲渡したり抵当権を設定したりできますが、賃借権では原則として賃貸人の承諾が必要となります。ただし、建物所有を目的とする土地利用については借地借家法によって賃貸人の協力を得られなくても対抗要件を備える手段が用意されているなど賃借人も手厚く保護されています。そのため、実務では地上権より土地賃貸借が利用されることが一般的です。

7回では、他人の土地を利用する物権のうち、実務上最も重要な地上権を中心に取り上げました。次回は、担保物権の代表である抵当権について見ていきたいと思います。

執筆者

【第7回】やさしい民法『他人の土地を利用する物権にはどのようなものがあるか。』

小西 飛鳥(こにし あすか)

平成国際大学

法学部 教授