Column 補償コラム

【第8回】やさしい民法『担保物権の代表である抵当権にはどのような特徴があるか。』

最終更新日:2026.09.10

 前回は、他人の土地を利用する物権のうち、実務上最も重要な地上権を中心にとりあげました。とはいうものの地上権よりも土地賃貸借が利用されるほうが一般的であることにも触れました。第8回では、担保物権の代表である抵当権について取り上げます。

民法は、担保物権として留置権、先取特権、質権、抵当権を定めています。これらのうち、留置権と先取特権は法律で定められた要件がみたされることにより成立する法定担保物権です。これに対して質権と抵当権は当事者の合意により成立する約定担保物権に分類されます。約定担保物権である質権と抵当権ですが、不動産質権は、質権者に目的不動産の占有・使用収益を認める制度であるため(民法第356条)、所有者である設定者は不動産を利用できず、現代では利用されることは極めて少ない状況です。これに対して、目的物の占有を抵当権者に移さない抵当権が、実務では最も広く利用されています。また、抵当権は同一の不動産について複数設定することができ、その優先弁済の順位は登記の前後によって定められます(民法第373条)。このため、実務上極めて利用価値の高い担保物権です。抵当権者は、担保の目的となる債権(被担保債権)の弁済が遅れた場合に、その目的物を競売にかけ競売代金から優先的に配当を受けることができます。抵当権も物権であり、第三者に対抗するためには登記を備えておく必要があります(民法第177条)。

 抵当権は、民法上はその設定の対象は不動産に限られていますが(民法第369条)、特別法により、自動車、船舶、航空機など登録・登記の制度が整備された動産も抵当権の対象として認められています。また、工場が建てられている土地、建物、そこに備え付けられた機械類を一体的に把握する工場抵当も認められています。

抵当権をはじめとした担保物権は、債権の回収を確実にするために担保目的物に設定されます。担保物権が有効に存在するためには、その目的である被担保債権が存在することが前提となります。被担保債権が弁済等により消滅すると、担保物権も自動的に消滅します。このように、被担保債権があってはじめて担保物権も存在するという関係を、担保物権の附従性といいます。担保物権は被担保債権の回収を確実にするためのものですから、この附従性は担保物権の基本的な性質です。しかし、この附従性をあえて緩和した根抵当権(民法第398条の2)という特別な担保物権があります。

根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を担保できるように、通常の抵当権(根抵当権との比較では普通抵当と呼びます)よりも附従性が緩和された担保物権です。住宅ローンのように、住宅を購入した人が銀行から金銭を借り受け、銀行がその債権を担保するには、普通抵当で十分です。しかし、企業が金融機関から融資を受ける場合には、一度だけではなく、継続的に融資を受けることが一般的です。継続的な取引や融資から生じる債権は、弁済によってその都度消滅します。このような当事者間で何度も債権が生じたり消滅したりを繰り返すような場合に、その都度抵当権を設定するのは手間であり、登記費用もかかります。さらに優先的に配当を受けられるのは登記をした順であるため、その順位を確保するためにも一度設定した担保権を継続して利用できれば効率的です。このような継続的取引や融資の便宜を図るために根抵当権は作られました。

日本では、土地と建物は別個の不動産として扱われます。そのため、土地の上に建物が建てられている場合には、土地と建物の両方を担保に取ることが一般的です。これを共同抵当といいます(民法第392条)。共同抵当を設定する意味としては、債権者が一つの不動産では担保価値が不足する場合に、複数の不動産について抵当権を取得することで、被担保債権に見合った担保価値を確保できるという点があります。共同抵当を登記する際は、共同抵当の関係にある不動産が存在することが登記され(不動産登記法第83条第1項第4号)、共同担保目録が備えられます(不動産登記法第83条第2項)。

最後に簡単に抵当権の実行についてみてみましょう。債務者が被担保債権に係る債務について履行遅滞に陥ると、抵当権者は債務名義を得なくても直ちに手続きを進めることができます。抵当権の実行には不動産競売手続きと不動産収益執行の2つがあります(民事執行法第180条)。不動産競売手続きは、目的不動産を競売し、抵当権者は優先的に配当を受けることができます。不動産収益執行は、賃料債権から配当を受けることができます。これらの手続きを利用することで、債権者は迅速な債権回収を図ることができます。

8回では、担保物権の代表である抵当権をとりあげました。次回は、土地に埋められている埋蔵物について見ていきたいと思います。

執筆者

【第8回】やさしい民法『担保物権の代表である抵当権にはどのような特徴があるか。』

小西 飛鳥(こにし あすか)

 

平成国際大学

 

法学部 教授