Column 補償コラム

【第9回】やさしい民法『埋蔵物とは何か。』

公開日:2026.09.14

 前回は、担保物権のうち、不動産を目的に設定する担保として代表的な抵当権をとりあげました。第9回では埋蔵物について取り上げます。

民法は、埋蔵物の定義を明らかにしていませんが、判例では埋蔵物について、土地その他の物の中に埋蔵され、外部から容易に発見することができず、所有者が判明しない物をいうとしています。一般的には土地に埋まっていた物が問題となることが多いのですが、海底にある船舶の中にあった物や家の壁の中にあった物なども対象となります。最近も海外のニュースですが、古い家屋を取り壊していたところ、壁の隙間から金貨が見つかったとの報道がなされていました。

それでは仮に建設業者が土地の所有者から依頼を受けてビルを建設しようとしていたところ、土地の中から金塊が見つかったらどうなるでしょうか。まずはその金塊の持ち主を探す必要があります。落とし物を拾った場合と同じですが、埋蔵物についても、まず所有者を探すために、遺失物法の規定に従って公告をします。それでも6か月以内に所有者が判明しない場合には、原則として発見者が所有権を取得します(民法第241条本文)。しかし、発見者がその土地の所有者ではない場合には、発見者と土地の所有者がそれぞれ2分の1ずつ所有権を取得します(同条ただし書)。

なお、埋蔵されていた物が文化財に該当する場合には、民法第241条とは別に、文化財保護法による特別な取扱いがされます。例えば、土地の中から土器、石器、木製品、貨幣など所有者不明の文化財が見つかった場合には、埋蔵文化財は貴重な国民の共有財産であることから、これらの埋蔵物は、国庫またはその文化財が発見された土地を管轄する都道府県に帰属し、発見した建設業者と土地の所有者には、一定の報奨金が支払われます(文化財保護法第104条、第105条)。

土地に埋められている物はそのような誰もが所有したいと思う物ばかりではありません。場合によっては、不要な物であったり、有害な物が埋められている場合もあります。もっとも、ここからは「埋蔵物」の所有権の問題とは別の問題です。土地の中に何かが埋まっていることによって、土地の売買契約の内容に適合しない場合には、契約不適合の問題が生じます。このような土地を売買する場合に、買主はそのような物が埋められた土地を購入しても問題ないでしょうか。売買契約の目的物は、当事者がその目的物の種類、品質又は数量についてどのように考えていたのかが重要になります。その契約の内容に合致していない場合は、契約不適合となり、買主は売主に対して追完や代金減額、契約の解除、損害賠償等を行うことができます(民法第562条、第563条、第564条、第541条、第415条)。

それでは、契約不適合とは具体的にどのような場合があるでしょうか。買主がその土地を購入してビルを建設しようとしていたところ、その地中にコンクリートの塊が埋められていたことが分かった場合、建設に支障となる障害物が存在しないことが契約の内容と予定されていたと認められるときには、契約不適合の場合に当たると考えられます。同様に埋蔵物とは必ずしも言えないかもしれませんが、ヒ素や鉛などが土壌汚染対策法に基づく基準値を超えて存在し、そのことが契約の内容に適合しないと評価される場合にも、契約不適合の問題が生じます。

今回は、土地などの中から物が発見された場合について、民法上の埋蔵物の制度、文化財に関する特別な取扱い、そして土地の売買における契約不適合という3つの観点から見てきました。次回は、取得時効について見ていきたいと思います。

執筆者

【第9回】やさしい民法『埋蔵物とは何か。』

小西 飛鳥(こにし あすか)

 

平成国際大学

 

法学部 教授